iDeCo(イデコ)とNISA(ニーサ)はいずれも税制面でメリットが得られる日本の投資制度です。
しかし、細かいルールには様々な違いがあり、よく知らないまま始めると、思ったようにメリットを得られないことがあります。
2024年1月から始まる新NISAも併せて、どちらから始めるべきかを解説します。
NISA(ニーサ)とは
NISAは日本で2014年に導入された、少額投資非課税制度のこと。
投資で得られた利益には税金がかかりますが、NISA口座を通じて行った投資であれば、その利益に対する税金が一定期間免除されます。
免除される期間や非課税となる投資の額はNISAの種類によって変わりますが、いずれも個人の資産形成を後押しするための仕組みです。
一方で、非課税期間が決まっているため(※新NISAを除く)、非課税期間が終わるタイミングでは、いわゆる「出口戦略」を考える必要があります。
2023年時点では、NISAと呼ばれるものには一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類があります。
大人が使えるNISAは一般NISAかつみたてNISAですが、どちらか一方しか使うことができません。
一般NISAとは
一般NISAは、20歳以上の個人が年間最大120万円まで投資できる制度。
投資された金額とその投資から得られる利益(配当や売却益など)は、5年間税金が免除されます。
投資可能な商品は株式、投資信託、ETF、REITなど、比較的幅広いのが特徴です。
一般NISAで購入した投資商品は、非課税期間(5年)を過ぎると運用益に税金がかかるようになりますが、新たなNISA口座にロールオーバー(移管)すると、再び5年間非課税で運用することができます。
つみたてNISAとは
つみたてNISAは、一般NISAと同じく20歳以上の個人が利用できる制度ですが、こちらは投資可能額が年間40万円まで。一方で、投資期間は最長20年と、一般NISAより長く設定されています。
一般NISAは様々な投資商品を選ぶことができましたが、つみたてNISAは投資信託やETFのみが対象となります。あくまでも、定期的に少額を積立投資し、長期的に資産形成を行うことを推進するための制度です。
つみたてNISAで選べる商品は一般NISAより限られるものの、金融庁が認めたものだけが選ばれているため、比較的元本割れのリスクも低く、初心者でも気軽に投資できるのが特徴です。
ジュニアNIASとは
ジュニアNISAは、未成年者(20歳未満)が利用できる制度。ただし、運用の管理者は親や祖父母などの保護者です。
非課税投資枠は年間80万円で、一般NISAやつみたてNISAと同じく、投資から得られる利益は税金が免除されます。投資期間は最長20年で、子どもが20歳になった時点で一般NISAに切り替わります。
iDeCo(イデコ)とは
iDeCoは個人型確定拠出年金のこと。毎月決めた金額を拠出して、自分で選んだ投資商品で運用し、60歳以降に掛金と運用益を受け取れる仕組みです。
投資可能額は、少ない人で年間14万4000円、多い人で年間81万6000円。
企業型DCやDB(確定給付企業年金)の仕組みがある会社で働いている方は、毎月の拠出可能額が最大でも1万2000円と低く設定されています。
仕組みがない会社に所属している方は2万3000円、フリーランスや個人事業主などの第1号被保険者は6万8000円が毎月の最大金額です。
NISA同様、運用益は非課税ですが、iDeCoの場合は掛金自体も所得から控除される(税金がかかる所得の額が減る)ため、税制面ではNISAよりもメリットが大きいです。
一方で、iDeCoは老後資金の形成を目的とした制度のため、原則として60歳まで引き出しができません。
2024年から始まる新NISAとは?
2024年1月から始まる新NISAは、一般NISAとつみたてNISAを組み合わせてアップグレードしたような制度です。
これまでは一般NISAとつみたてNISAはどちらかしか使えませんでしたが、新NISAでは併用可能に。毎月定額を積み立てつつ、ボーナス月には個別株を買うといったことがNISA枠内でできるようになります。
さらに、積立可能額もアップ。積立枠は年間40万円→年間120万円となり、株式などが購入できる成長投資枠(従来の一般NISA枠の位置づけ)は年間120万円→240万円に。合計で年間360万円が投資可能です。
投資可能総額は、つみたてNISAが800万円(40万円×20年)、一般NISAが600万円(120万円×5年)でしたが、新NISAは1800万円。
なお、成長投資枠は1200万円までと制限があります。成長投資枠を1200万円まで使った場合は、残り600万円は積立投資枠としてしか使えません。
非課税期間は、つみたてNISAが20年、一般NISAが5年でしたが、新NISAはなんと無期限。しかも、保有していた投資商品を売却した場合は、売却した翌年に投資枠を再利用できるようになりました。
これまでのNISAは、年間の投資枠は使い切ったうえで、非課税期間中ずっと持ち続けないと”もったいない”制度でした。
新NISAは非課税期間に制限がなく、投資枠も再利用できるため、お金が必要なときに投資商品を売却することによるデメリットが小さくなります(ただし、長期的に保有したほうが資産は大きくなりやすいため、途中で売却すること自体はデメリットが強いです)。
NISAとiDeCoはどちらから始めるべき?
基本的にはNISAから始めることをおすすめします。
理由は大きく3つ。
iDeCoは60歳まで引き出せないから
iDeCoの最も大きいデメリットが、引き出せる年齢に制限があること。急にお金が必要になったとしても、iDeCoで運用しているお金は引き出すことができません。
投資に充てられる金額が少なく、NISAかiDeCoのどちらかしか選べない場合は、預貯金もそこまで多くないケースが大半かと思います。その中で、「60歳まで使えない資産」を作ってしまうのはリスキーです。
基本的には、預貯金が増え、引き出せないお金になっても問題ない金額を拠出できるようになったタイミングでiDeCoを始めるほうがよいでしょう。
新NISAは途中で引き出すことのデメリットが小さいから
これまでのNISAでは、途中で投資商品を売却するとその枠はもう使うことができないため、お金を引き出すことのデメリットが大きく、「引き出せないわけではないが、引き出すべきではない」お金でした。
しかし、新NISAは途中で売却したとしても、その枠は翌年に再利用ができるため、比較的途中売却のデメリットが小さいです。これまでのNISAと比べて、預貯金に近い使い方ができるようになっています。
売却時には購入時より価格が下がっているかもしれないリスクがありますが、非課税期間は無期限なため、取り返すチャンスも残ります。
小さい額で始めても問題ないから
これまでのNISAでは、非課税期間が決まっているため、始めた以上は年間の投資可能額を最大まで使わないともったいない制度でした。
つみたてNISAで年間12万円投資(毎月1万円)しても、40万円(毎月3万円強)投資しても、非課税期間は一律20年。非課税となる投資額の総額にも差が出ます。
新NISAではこの制約がなくなったため、毎月5000円の投資でもまったく問題ありません。何もしないよりはよっぽど利があります。
NISAを始めたらiDeCoは不要?
優先すべきはNISAですが、NISAがあればiDeCoはいらないのか、と言われたら、そういうわけでもありません。
自由度が上がった新NISAですが、総額の制限はあります。これから先、長い期間コツコツと投資を続けていくのであれば、総額を使い切ってしまう可能性は当然あります。
そして、お金を積み立てる目的には、老後資金の確保ももちろんあるでしょう。
であるなら、老後資金として確保したいお金は素直にiDeCoを使ったほうがいいです。iDeCoは所得から拠出額を控除できる(税金がかかる所得の額を小さくできる)という強いカードを持っています。
NISAを優先しつつ、iDeCoに拠出しても問題ない程度に日々の資金に余裕が出たら、iDeCoも始めましょう。
なお、NISAと貯金のどっちを優先すべきか悩んだ方は、こちらの記事も参照してください。

まとめ
- 基本的にはiDeCoよりNISAを優先
- 両方始められる余裕が出たら、iDeCoも始めたほうがいい
- 新NISAすごい
投資にお金を充てる余裕がある方は、とにかくNISAを始めましょう。
新NISAは2024年からですが、2023年中は一般NISAもつみたてNISAも始められます(購入可能な期間は2023年中)。
一般NISAやつみたてNISAで使った投資枠は新NISAとは完全に別枠ですので、始められる方は早く始めたほうがいいです。個人的には20年間の非課税期間があるつみたてNISAがおすすめ。
2023年中につみたてNISAを開始し、2024年から新NISAを開始するのが個人的ベストシナリオです。